【コラム】瞑想によって自分の感情の声を聴く方法

〜自分の気持ちに意識を向け瞑想すれば、 穏やかな心とグラウンディングと健康が得られます〜

リチャード・ミラー博士
『Yoga Journal 米国版』2016年10月19日掲載

《自分の気持ちに意識を向けて瞑想し、

 穏やかな心とグラウンディングと健康を得る》

感情は、嵐のような激しさと不協和音で体の中を暴れまわり、私たちを身動きできなくさせる力を持っています。たとえば怒りを感じている時は、お腹の筋肉がこわばり、胸がドキドキして、心をかき乱すような思いに数分間、数時間、ときには数日間も苛(さいな)まれるでしょう。それが怒りであれ、穏やかさや不安、悲しみや楽しさといったものであれ、感情というものは必ず神経系を活性化させ、血液中に化学物質を放出させるため、あなたの意識とエネルギーを他の事柄から引き離すことができるのです。そんなにも強い感情に、あなたは〝敵〟というレッテルを貼りたくなるかもしれません。ですが、まぎれもなく感じているものを自分が受け入れようとしなければ、避けることのできない運命をただ遅らせるだけです。否定した感情はいつか必ずあなたのもとに戻ってきて、大切な情報を伝えようとするでしょう。

平常心を取り戻す力についての研究によると、人生の舵(かじ)取りをうまくできるようになるために必要な能力は、自分が体験している感情に名前をつけられること、そしてその体験を構成している感覚や気持ちを言葉で説明できることだそうです。まさにこのような時に瞑想が役立つでしょう。瞑想は、感情を観察し、見極め、ただそれに〝反応〟するのではなく〝対応〟することを教えてくれます。たとえば怒りは、あなたが期待している事柄がもう現実的ではないということを認識させるために出てくるのかもしれません。そうしたことを正しく理解すれば、自分自身とも周囲の世界とも調和した形で状況に対処できるようになるのです。

具体的な例として私自身の経験をお話しましょう。最近、飛行機の時間に遅れそうになり走ったことがありました。やっとの思いで着いた瞬間に搭乗ゲートへの扉が閉まってしまい、当然のごとく私は怒りを覚えました。でも一歩引いて自分の怒りを観察してみると、「まさか目の前で扉を閉められたりはしないだろう」と期待していたことにすぐ気がつきました。そしてそのことを認めたおかげで、客室乗務員に怒鳴りつけたい気持ちをおさえ、かわりに別のフライトに搭乗できるかどうかを尋ねることができたのです。「はい、ふたつ向こうのゲートです」と教えてもらい、私はなんとか間に合いましたが、もうひとりの客はそのまま最初のゲートでかんしゃくを起こし続け、他にも搭乗可能な便があることを告げる客室乗務員の声も耳に入らない様子でした。私の乗った飛行機が離陸した時にはまだ空席が残っていたので、もし彼がそこで立ち止まって、メッセンジャーとしての怒りの声に耳を傾けていれば、私の隣に座れたかもしれません!

瞑想の中では、感情を喜んで受け入れ、体験するために必要なマインドフルネスの状態になります。すると自然にわかってくるでしょう‥感情は敵ではなく、むしろその逆だということが! 感情もあなたと同じように、きちんと見て、聞いて、感じて、つながってほしいと望んでいるのです。感情はあなたの注意を惹きつけ、立ち止まらせ、ただ生き延びるだけでなく成長するために必要な情報にアクセスしてもらいたがっているのです。たとえば熊を見かけたら、怖れがメッセンジャーとして現れ、あなたの足を止め、後ずさりさせて安全を保ってくれます。友人や仕事仲間があなたの時間をあまりにも多く要求してきたら、不安や怒りが現れて適切な境界線を引かせ、予定が狂わないようにしてくれるでしょう。

このあとに行う誘導瞑想では、まず自分の感じている気持ちを喜んで受け入れることに集中します。次に、それとは正反対の気持ちに集中する、というワークを行っていきます‥たとえば怒っている時に平和な気持ちも受け入れるように。これは感情とつながる驚くべき方法で、ネガティブなあるいは破壊的な〝反応〟から抜け出せなかったという人も、よりポジティブで建設的な〝対応〟が認識できるように変化させてくれます。

心を開いてひとつひとつの感情を喜んで受け入れ、味わい、そしてその正反対の感情も同じようにしていくのであれば、もはや不安も怖れもあなたの人生をコントロールすることはできません。厳しい自己批判も力を失い、自己愛と優しさと共感がのびのびと花開いていくでしょう。正反対の感情を同時に受け入れることで、私たちをネガティブな感情でがんじがらめにしている、脳の初期設定のネットワークと大脳辺縁系は活動を停止してしまうのです。さらに、意識の焦点をぼかす脳のネットワークと海馬を活性化させ、それにより洞察と総体的な判断が生まれ、邪魔されてかんしゃくを起こすような条件反射的な行動パターンから解放されるようになるのです。

 

《感情を会話に引き込む》

時間を作って以下の練習をしてみてください。いろいろな感情を喜んで受け入れ、自分にパワーを与える行動で〝対応〟する、という能力を高めることができます。

 

練習1:積極的に感情を受け入れる 

目は開けていても、閉じていても構いません。周囲の環境と物音を喜んで受け入れましょう‥肌にあたる空気の感じや、身体を支えてくれているもの[椅子など]と触れている感覚、そして体の内側にある感情を味わいます。その感情は体のどこでどんなふうに感じられるかに注目して、いちばんぴったりする言葉で「こんな感じ/こんな気持ち」と表現してみてください。

こんどは、その感情がドアから入ってくるところを想像してみましょう。最初に浮かんだイメージを採用してください。感情はどんな姿をしていますか? どんな形や大きさでしょうか? もしそれが人間であるなら性別や年齢は? どんな服を着ているのでしょう? 少し時間をとって、あなたの感情の姿を喜んで受け入れてみてください。

次に、その感情があなたの目の前に、適切な距離をとって立っている、あるいは座っているところを想像してみましょう。

「あなたの望みは何ですか?」とその感情に尋ね、その答えに耳を傾けてください。

「あなたに必要なものは何ですか?」と尋ね、その答えに耳を傾けます。

「あなたは私にどうして欲しいのですか?」 と尋ね、その答えに耳を傾けます。

少し時間をとって、自分の体と心が何を体験しているのかについて、よく考えてみてください。

いいと思ったら目を開けて、通常の意識状態に戻り、瞑想のための時間をつくった自分自身に感謝をしましょう。

ゆっくり時間をかけて、その感情を処理する手助けになりそうな行動として思いついたものをメモし、日常生活でしっかり実行することを決意しましょう。

 

練習2:正反対の感情を喜んで受け入れる

どの感情も、必ず対となる感情が存在します。安心がなければ不安は存在できませんし、勇気がなければ怖れは存在できません。幸福感がなければ悲しみは存在できません。そして無力感も、その正反対にあたるパワーに満ちた感覚がなければ存在できないのです。正反対のペアのうち片方しか体験していないと(悲しみだけで幸福感がない、あるいは不安だけで安心がないなど)、偏った状態から抜け出せません。でも今、自分が体験しているものを取り除こうとするのではなく、様々な感情に対して心を開いていけば、あなたは自由になれるのです。もちろん強い不安などに悩まされる状態はとても辛いものですが、このエクササイズによって状態が軽減されると、パワーに満ちた感覚を取り戻して変化を起こすにはどのように行動すべきかに、気付きやすくなるはずです。

目は開けていても、閉じていても構いません。 周囲の環境や物音を喜んで受け入れましょう‥肌にあたる空気の感じや、体を支えてくれているものと触れている感覚を味わっていきます。

では、今この瞬間にあなたの体の内側にある感情を受け入れましょう、あるいは日常の中でテーマになっている感情を思い出し、それが体のどこでどんなふうに感じられるかをよく味わってみてください。良い悪いといった判断をせず、またそれらを変えようとしたりせず、ありのままを喜んで受け入れましょう。

次に、その正反対の感情を思い浮かべ、体のどこでどのように感じられるかに注目してください。必要なら、正反対の感情がしっかりと体によみがえってくるようなことを思い出してみましょう。例えば「休暇で行った旅先で、とても静かで穏やかな気持ちだったあの時」など。

準備ができたら、ふたつの正反対の感情を行ったり来たりしてみて、それぞれあなたの体と心にどのような影響を与えるかを感じてみます。

これで良いと感じたら、両方の感情を同時に味わってみて、体と心がどう感じるかを確かめてみてください。

こんどは全体的な幸福感と、ふたつの正反対の感情をかわるがわる味わっていきます。最初に幸福感を、次に正反対の感情をひとつずつ順番に、そして最後にふたつの感情と幸福感を全部いっぺんに味わってみます。あなたの体と心はどのように感じるでしょうか。

準備ができたら次は、目を開けたり閉じたりを数回繰り返しながら、深いリラクゼーションと、安らぎ、幸福感、平和を、全身で感じていきましょう。日常生活に戻っても、深いリラクゼーションと幸福感が常にあなたと共にあると宣言(アファメーション)してください。

これで良いと感じたら目を開けて、通常の意識状態に戻り、この瞑想のための時間をつくった自分自身に感謝しましょう。

エクササイズの感想や、日常生活で実行しようと決めたことがあれば、その意図や目的をどこかに書き留めておきます。

 

《前進する》

感情はメッセンジャーであり、あなたの人生や人間関係にパワーを取り戻すために、どんな行動をとるべきかを教えてくれます。筋肉を強化するためには時間がかかるのと同じように、自分の感情も、避けるのではなく喜んで受け入れ〝対応〟する力を強化するためには、時間が必要です。ですがぜひ感情を手掛かりにして、よりクリエイティブな解決策を見つけ、人生を上手に舵取りできるようになって頂ければと思います。

 

 

《著者紹介》

リチャード・ミラー博士は統合回復研究所(米国 iRest)の創設者・代表で、また国際ヨガセラピスト協会の共同創設者です。このコラムは、自分なりの瞑想法を確立していくための10回シリーズの第6回にあたります。